花の謌
第1章 No.1
「水だけでは、足りないわよ」
全て見透かしたように、彼女は目を伏せて微笑む。
それからちらりとこちらを見やる。
妖艶な眼差し。
ぼくはどんどん早くなる鼓動を抑えることができない。
彼女の話はこうだ。
“花”として生を受ける者たちは皆、「ジプシー」であり、
人間に「愛され」たとき、その本来の姿を現す。「開花」。
だが花を「愛する」人間はそうそういない。
大抵の者たちが 花 として生涯を終える。
しかし自分は「開花」した。
ぼくの愛ーー欲情は究極の愛情、と彼女は言うーーをその身に受けて。
「あなたはわたしのことを愛しているのね」
呟いた彼女は、うっとりと顔をほころばせた。
ああ、愛しているさ。君を一目見たときからずっと。
そう叫びたいのを抑えて、ぼくは問う。
「君は、ぼくの前から消えてしまうの?」
危惧していた。ジプシーならば、羽根が生え、自由に飛んでいってしまうのではないか。ぼくの花ではなくなってしまうのではないか。
しかし彼女は表情を変えずに淡々と答えた。
「消える?なぜ?もうあたしはあなたのものよ。傍に置いておくのも、捨てるのも、あなた次第」
ぼくの、もの。
こんなときが来るなんて思いもしなかった。
美しい高嶺の花、恋い焦がれてやまなかった存在。
その彼女が、自ら宣言した。「ぼくのもの」だと。
「本当に、本当にぼくの…ぼくだけの君でいてくれるの?」
「ねえ、キスをして。あなたの気持ちありったけ込めた、この世で一番きらきらしてどろどろしたキス」
頬を紅潮させ、期待に満ちた瞳でぼくを見つめる彼女。
ーー手に入れた。夢にまで見た彼女を、現実に。
「ありったけのキス」をするため、ぼくは彼女に近付いた。
全て見透かしたように、彼女は目を伏せて微笑む。
それからちらりとこちらを見やる。
妖艶な眼差し。
ぼくはどんどん早くなる鼓動を抑えることができない。
彼女の話はこうだ。
“花”として生を受ける者たちは皆、「ジプシー」であり、
人間に「愛され」たとき、その本来の姿を現す。「開花」。
だが花を「愛する」人間はそうそういない。
大抵の者たちが 花 として生涯を終える。
しかし自分は「開花」した。
ぼくの愛ーー欲情は究極の愛情、と彼女は言うーーをその身に受けて。
「あなたはわたしのことを愛しているのね」
呟いた彼女は、うっとりと顔をほころばせた。
ああ、愛しているさ。君を一目見たときからずっと。
そう叫びたいのを抑えて、ぼくは問う。
「君は、ぼくの前から消えてしまうの?」
危惧していた。ジプシーならば、羽根が生え、自由に飛んでいってしまうのではないか。ぼくの花ではなくなってしまうのではないか。
しかし彼女は表情を変えずに淡々と答えた。
「消える?なぜ?もうあたしはあなたのものよ。傍に置いておくのも、捨てるのも、あなた次第」
ぼくの、もの。
こんなときが来るなんて思いもしなかった。
美しい高嶺の花、恋い焦がれてやまなかった存在。
その彼女が、自ら宣言した。「ぼくのもの」だと。
「本当に、本当にぼくの…ぼくだけの君でいてくれるの?」
「ねえ、キスをして。あなたの気持ちありったけ込めた、この世で一番きらきらしてどろどろしたキス」
頬を紅潮させ、期待に満ちた瞳でぼくを見つめる彼女。
ーー手に入れた。夢にまで見た彼女を、現実に。
「ありったけのキス」をするため、ぼくは彼女に近付いた。