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アクマにアソコを貸しました

第6章 ロスタイム上等じゃないですか

両腕の中に抱きしめて掌をあちこちに滑らせながら、うっとりと顔をあげた梓穏の瞼に唇をそっとあてた。

鼻の頭、額、こめかみ…

キスを雨と降らせながらこの隙に彼女の体を影で拘束する。

微弱な呪いでも、解除には多少もがく程に苦痛を伴う。

梓穏の体を拘束する為に影がひっそりと這い上るのを確認して自分の左手の指先を咬み切った。流れ出てきた体液で右手の甲に解除の印を描いて、掌を肩の傷口に当てる。


掌が熱くなって、梓穏の血液に混じった呪いが集まってきた事を知る。


「あつ…ケィシ、なんか痛いよ

あぁっ!!熱いよ、やめて!痛――いっっ!!

いやぁぁぁ!」


ガックリと力を失って崩れた梓穏の体を抱き上げてベッドに横たえた。
真赭のやつ――俺だって、呪術を解除するよりもかける方が得意なのだが。


何か傷付いたような真赭の暗い橙の瞳を思い出して、ため息を吐くに止めた。
裸で眠る梓穏を後ろから抱きしめて目を閉じる。

わざわざ呪術を解除したのは、もう少しで彼女と離れるからだ。なに鳥後を濁さずだっけ?


――そう、帰る。真赭と共に生まれた地へ帰るんだ。
まるで、帰りたくないという者に言い聞かせるように、何度も反芻した事さえ気がついていなかった――

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