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晴れと雨

第2章 慣

「じゃあネクタイピンなんてどうかな」

あのあと贈る物に悩んでいるとこを相談すると、菜々子はアドバイザーをかってでてくれた。
バイト終わりに、二人で喫茶店に入り頭を寄せて相談する。

「そうですね、やっぱり使うものがいいですよね」

「うん。お財布とかキーケースは人によって使いにくいとかあるし、時計とかは目上の人が目下にあげるとか意味あるからよくないし」

「うん…よし、ネクタイピンにします」

既に氷の溶けてしまっているアイスコーヒーに口をつけ、渚は菜々子に顔を向ける。
ふと、菜々子の後ろの柱に掛かっている時計も視界に入り、渚は慌てた。

「ゃっば、貴史さん帰ってくる時間だ」

「ふふ、なんだか奥さんみたいだね。ここは出しておくから早く帰りなよ」

急いで荷物をまとめる渚に、菜々子は伝票をヒラヒラと揺らしながら促した。

「え、でも悪いですよ」

「いいよ、また今度デートしてくれたときに出してくれれば」

"デート"その単語に少し動揺しつつも、渚は菜々子に軽く二三、会釈すると早足に店を出た。
考えてみれば、女性と二人でこんな風に過ごしたことは記憶にない。
渚は、少し早くなった鼓動を感じながら帰路を急いだ。

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