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晴れと雨

第2章 慣

「若月くん」

セミロングの黒髪をさらりとなびかせた女性が、渚に声をかける。

「あ、瀬川さん。こんにちは」

その女性、瀬川菜々子は常連だった。
渚とも度々顔を会わせており、歳も近いだけあり、すぐに親しくなっていた。

「今日もいたんだね。随分がんばるね」

菜々子の言葉に、渚は頭をかいた。
褒められるのは慣れていない。

「ちょっと欲しいものがありまして」

といっても、まだ貴史になにを贈るかなんて決まっていなかった。
家を見渡しても趣味らしいものもなく、嗜好もよ
くわかっていない。

「そうなんだ。高いものなの?」

「いや、高価なものは贈るつもりないんですけど」

「え、もしかして誰かにプレゼント?」

少し驚いた様子の菜々子に、何故だか渚は焦ってしまう。

「あ、いや、同居してる人に感謝のつもりで、あの、女性とかに贈るわけじゃなくて」

その慌てぶりに、菜々子は肩を小さく揺らし笑う。
あまりにも綺麗に笑うものだから、恥ずかしさもあって渚は耳まで赤くなっていた。


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