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晴れと雨

第3章 日

このままゆっくり、着実に、貴史さんのこと知っていけるものかと思っていた。
いつか自分が貴史さんの家を出ても、二人の関係は良好のままでいたい。
貴史さんが、生涯の伴侶をみつけても。
ずっと関係があってほしい。
世の中の人にはそんなこと当たり前なのかもしれない。
でも自分にとっては、この若月渚という奴にとっては、それは難しく、叶えがたい願望だった。
今はその叶えがたいハズのものが目の前まできている。
手が届きそう。
あと何歩か前に進めば、それは手にはいる。

「あ、駅前に新しくできた本屋いきません?」

貴史さんの目が少しだけ開いた気がした。

「…なんですか、その顔」

「いや、渚に本だなんてなんだか似合わない気がして、つい」

「さらっと失礼ですね。本くらい読みますよ」

「わるいわるい、じゃあ今度の休みは駅前ブラブラするか」

少し口角を上げて、全然申し訳なさそうに貴史さんは笑う。
やばい。
男相手に、しかも年上相手に嬉しくなってしまう自分に戸惑う。

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