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晴れと雨

第4章 苦

「…ただいま」

いつもの出迎えがないことを不思議に思いながらも貴史はリビングに居るであろう渚に声をかけた。
確かに渚はリビングのソファに座っていた。
ただ、いつもの覇気がなく座っているだけだった。

「渚?」

「あ、貴史さんおかえりなさい」

「どうした?元気ないな…彼女に嫌われでもしたか」

言い終わるか否かのところで貴史はハッとする。
渚の表情の変化で、その言葉が本当になっていると気が付いたから。

「貴史さん、聞いてくれますか」

「俺でよければ」

「おれ、貴史さんのことばっかりらしいです」

隣に座る貴史に渚はそう切り出した。

「自覚がなかったわけじゃないんです。でも確かに今のおれの世界って貴史さん中心ていうか…貴史さんがいなかったらこうしていられなかったというか」

渚の言葉にただ無言で頷く。

「…女の子からしたら嫌ですよね。会っても男の話ばかりしてるんですもん……でも」

涙でぼやけた視界に貴史を捉える。

「でも、おれには、それだけ貴史さんが必要なんだって」

貴史は、溢れる涙を拭おうとしない渚から目を離せないでいた。





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