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晴れと雨

第2章 慣

「だったら内緒で雇ってあげようか?」

ただ家にいて、家事をして貴史の帰りを待つだけなのは申し訳ない。
いつかの恩も返したい。
そんなことを、いつも行く八百屋で愚痴る渚に救いの言葉がかかる。

「いいんですか?」

途端にキラキラと目を輝かせる渚に、店長は続けた。

「あまり多くは出せないけど、それでもいいってんならね」

「構いません、構いません。雇ってくれるだけで嬉しいです」

早速明日から、と約束をもらい、渚は浮き足だって家に帰っていく。
これで貴史さんにプレゼントができる。
頭のなかはその思いでいっぱいだった。
その日から渚は、貴史が不在の日中に密かにバイトに励むのであった。

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