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晴れと雨

第2章 慣

渚のバイト先には、様々な人間が訪れる。
それはここに限ったことではないのだろうが、刺激を求めて単身上京してきた渚にとっては新鮮だった。
周りを見ることで、自分の造詣を深めることが出来るようで嬉しかった。

貴史はなにを思っているんだろう。

半ば強引に家にいついているが、彼は力任せに追い出そうとはしない。
二人の距離は遠いから、寂しさは感じるけれど。
この経験で、少しは貴史に近付くことが出来るだろうか。
実家に居たときよりも、自分の価値が見出だせるだろうか。

『おまえはホントに手がかからない子だね、まったく可愛いげがないよ』

親に言われたことだった。
弟が産まれてからは、どうにか迷惑かけないように、嫌われないようにと行動していた末に言われたそれは、渚に大きなショックを与えた。
親のためにと頑張ったのに。
期待もされず、可愛がられもせず。
いつしか渚は、自分の存在を快く受け入れてくれる場所を探していた。
高校卒業し、家を出たのもその為だった。
都会に出れば
たくさんの人がいれば
誰かしら自分をみてくれる人がいる。
それが自分を助けてくれた貴史であってほしい。
その為には彼を知らなきゃならない。
その為には自分が大人にならなきゃならない。

渚は、改めて決意を固めた。

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