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SYらぶらぶ集〜X❤︎L〜ゼロリナ

第11章 悲しみに捧ぐリコリスの花束を

朝日眩しい。
久しぶりに青年に抱かれ、リナはまたかすかに思った。

(やっぱり・・・安心、する)

心地よくて、温かで。体温はないのに、とてもーーとても、幸せになれる。彼とも違う、安心感。

「おはよう・・・ゼロス」
「はい、リナさん」

毎朝。起床時に日課にしていた軽いくちづけ。
しばらく離れていた時に、それの大切さを痛感した少女。でも、今はそばにある。なくして始めて気づいた大切なもの。
少女と青年は互いに微笑み合うと、お互いの存在を確認するような・・・お互いの唇にくちづけ。

「さぁ、ご飯に行きましょうか。しっかり食べて、栄養つけてくださいね?」
「うん。わかってるわ。」

食堂に降りてきた少女と青年に、宿の主人も微笑ましく見て、椅子へと促した。
それほど、二人の雰囲気は誰が見ても幸せに満ちていた。
旅人も。町の人も。羨ましそうに二人のことを見る。誰が見ても、お似合いだった。


食事を10人前食べた少女と青年は、町並みを肩を並べて歩く。
古ぼけた、由緒正しき家々が軒を連ねる町並み。そして綺麗なアンティーク調の店。お洒落なチョコレイト・ショップ。硝子細工がきらきらと輝くジュエリイ・ショップ。
美しい町を堪能した二人は、カフェでお茶をしていた。

「さて・・・と。では、参りましょうか。」
「・・・ん。」

かすかに震えている少女の表情は明らかに固い。まだ、早すぎるのか。
あの2人と決着をつけるのは。
ーーぎゅっと、唇を噛んで、少女は顔を上げて、まっすぐゼロスを見据えた。

「大丈夫。行きましょ!」
「それでこそ・・・僕が惹かれたリナさんですね。」

優しい笑顔に、リナは更に安心する。大丈夫だ。自分には青年がいる。ひとりぼっちじゃない。
それに、彼にも、彼女にも。このままなにもせず逃げているのは失礼だから。
ーーー行かなければ。覚悟を決めなければ、ならない。


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