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SYらぶらぶ集〜X❤︎L〜ゼロリナ

第14章 Halloween Night Story

「えーと、カボチャのパイにベリーのキッシュ。カボチャシフォンケーキに・・・白ワイン。あとはー・・・」
オレンジと黒を基調とした飾り付けが施された一軒家。そのキッチンでエプロンを着てせわしなく動き回る紅茶色の髪の少女。
もちろん自分で楽しむ分の料理のみ。大量に積まれたお菓子も、リナ用。さっきから小さい子供達がひっきりなしに『トリック・オア・トリート♪』と様々な仮装をして訪ねてきていた。案外面倒見の良い少女はお菓子をカボチャ型のバスケットにたくさん詰め、可愛くラッピングをして一人ひとりに渡してあげた。
そのお菓子を嬉しそうに受け取る子供達を見ると、幸せがこみ上げる。
鼻歌とコトコトというシチューを煮込む音が賑やかに奏でられる。ヘタなバックミュージックが流れるより、楽しげな雰囲気のキッチンに溢れかえる中、異質なものが少女の背後に現れる。
少女はそれに驚きもせず、当たり前のように腰に腕を回し、首筋にキスを落としたそいつを小さく小突いた。
「ただいま帰りました」
「ん、お帰り」
少女は照れながらも背後に現れた青年ーー少女の夫である魔族ーーのほっぺにチュッとキスをした。
「今日はハロウィンパーティをするんだって、アメリア騒いでたわ」
「ああ、あの異界の宗教の祭りですね。
それにリナさんも乗った、と?」
青年は物珍しそうに辺りを見回す。フラッグを連ねた飾り付けに、カボチャをくり抜いたランタン。黒猫の置物には可愛らしいオレンジのマントが着せられている。
そしてテーブルに並ぶ美味しそうな料理の数々。もちろん少女が腕によりをかけて拵えた自慢の料理たちだ。
「そ。楽しそうだからね♪」
「リナさんらしい。
何か、お手伝いしますか?」
いつもの神官服から、ラフな黒いTシャツとジーンズにいつの間にか着替えていた青年はリナを解放し、離れ際にほっぺにキスを返した。
「ん、ならシチューよそるから、お皿お願い」
「はい」
食器棚にあるシチュー皿を探しながら、青年はふと窓の外へ何となしに視線を巡らせた。ランタンの明かりがちらちらと伺える。きっと、子供達が家々におかしをねだりに行っているのだろう。

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