SYらぶらぶ集〜X❤︎L〜ゼロリナ
第6章 月酔ールナトリップ-
暗闇に包まれ、灯りが無いと不気味な雰囲気さえする夜遅く。お世辞にも良いとは言えない治安の村の古ぼけた酒屋にて。
夜の闇に映える艶やかな栗色の長髪をふわりと揺らし、一人の少女がカウンター席に座り、カクテルの入ったグラスを口に付けくいと傾かせていた。
少女は、長い時間この酒場にいるらしい。積み重ねられ、カウンター席の半分ほどに広げられたグラス、酒瓶がそれを後付けしていた。
今、少女が飲んでいるカクテルは、マスターからの奢りらしい。一気にそれを飲み干し、ダンッとグラスをカウンターに叩きつけ、カウンターに突っ伏した。
「・・・彼氏にでも捨てられたのかい、お嬢さん」
そろそろ閉店ということで、さっきまでいた客が使用していたグラスを磨きながら、マスターは何ともなしに問うた。
その問いかけに、少女はさらに機嫌を悪くしたように、吐き捨てるように。
「・・・ちがーわよ。ね、どう思う?」
「・・・どう思う、と仰いますと?」
「あたしの、恋人。遂に会いに来ない日数が5ヶ月と29日よ!!ヒック。
・・・明日で半年よ、半年!信じらんらい・・・むにゃ」
相当酔っているであろう少女は、とことん目を据わらせ不平不満をマスターへとぶちまけた。
それを冷静そのものな表情で聞き、マスターはまた別なカクテルを少女の前へ静かに置いた。
そして、そのグラスを置いた音より、さらに静かな口調で。
「お嬢さん、もうアルコールはやめた方が良い。・・・これはアルコールが入っていないカクテルだから、飲みなさい」
「ゔー・・・
いたらきます」
仕方なく、少女は出してくれたカクテルを一口含んだ。甘くて、でも柑橘系独特の苦さもある。アルコールは入っていない様だけど、今まで少女の腹に収まったアルコール類よりもぐらりと酔いそうな雰囲気に、知らず知らず涙をポロリとこぼした。
「あたしって、素直じゃないの」
「・・・」
「だから、あいつが仕事って言って消える時。何ともないフリをして別れ告げるの。・・・当たり前、仕方ないから、解り切ったことだから・・・って」
少女の話は止まらない。
「ほんとは、もっと傍にいたい。
・・・キスして、抱き合って、いたい。
でも、そんなこと口が滑っても言えない。あたし、素直じゃない上につよがりで意地っ張りなのよ」
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