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「俺は、男だ!クソ野郎」

第9章 うん。はい断る



―――――
……。



全力疾走をした結果、なんとか逃げ切れることができた。




よし。ここまで来れば大丈夫だろう。

曲がり角の所でバッと翼先輩の腕を掴んでいた手を放す。





だが。

…あれ?手が放れないぞ。


手に違和感が。




「…あの、何しているんですか?」



翼先輩は、

俺が放した途端にすぐ掴んできたのだ。


「何ってそりゃあ、せっかく姫が強引に俺の腕を掴んだのに簡単に放すことなんてしたくないからだよ」


「……」



なんつー理由。

言葉が出ないとはこのことだ。



強引だったのは申し訳ないと思っているが。






変な脳内環境の奴と付き合ってらんね。




「放してもらわないと困るんですけど」




非常に困る。


せっかくの休憩なのに

色んな所、まわれないじゃないか。


暇じゃない。




「俺の方が困るよ。そんな可愛い格好してウロウロされたら狼に食べられちゃうでしょ?」




…。



うん引く。

ものすごい引く。




とんだメルヘン野郎だ。




「帰ります」



「えっ!?ちょ、姫!」



ここは、もう強制突破しかないと思った。


掴まれながらも、足を進めた。





「ちょ、ススストップ!わかったわかったから!」


降参、と聞こえたのでとりあえず止まる。






「早く、放して?」


俺は、不自然にニコリと笑う。






そしたら、ぶつぶつなんか言いつつも

しぶしぶ放したくれた。







ふぅ。解放解放。

手が赤くなっているのはまぁ、気にしないでおこう。


全く俺ってば優しいな。








「ねぇ、姫。改めて聞くけど副会長と知り合いなの?」




さっきの出来事を聞いてきた。

それはそうだよな。



そのせいで、走らされる羽目になったんだもんな。




「知り合い?そんなんじゃない。前言っただろ。お前がこの俺を無理矢理、美容室で女装させたあの日にな」




そう告げたら、少し間を置いて

『ああ!』と思い出した顔をした。






「あの時か!だったらアイツ、今も姫を女だと勘違いしているよな」




「そうかもしれない」


いや、絶対そうだけど。

うわ、バレた時がやばい。



笑われる。













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