紳士協定布いてます
第6章 同郷の華
矢島はニヤリと笑って、圭一の隣に立ち中庭を見下ろす。
「あ、あれ。ダイだ。」
「どれ?本当だ。」
「ここのところ、図書館で丸山と泰弘を覗いているらしいぞ。」
「ここのところ・・・・?」
「何だ知らないのか?」
「丸山と二人で図書館にいたのか・・・。
泰弘の奴、紹介してくれるって言っておいて自分だけ親睦深めやがって。」
「泰弘なりに、お前が編入生に興味を持ってることに妬いてんじゃないの?」
「そんな風に思っててくれるのかな。俺、自信ないよ。」
「よく言うよ、愛されてるって。」
飄々と言い切る矢島の横顔をみて、圭一は中庭に視線を戻し呟いた。
「・・・・、だな。」
--そう、泰弘が自分を拒む筈がない。
人気のないところで何度かキスをしかけても、恥じらって抗いこそすれ、酷く拒絶されたことは・・・・・、一度もない。
泰弘は興味本位でそういう行為を受け入れるような性格ではないのだから。
ただ、今までは・・・・、だ。
遥暉といる時の泰弘を見ていると、無性に不安に駆られるのだ。