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ただ、君を愛するための嘘をつく

第2章 海底モノクローム


「有野 祐実。」

突然フルネームなんか呼ばれるから、キョトンとしてしまった

こちらを指さしながら
一言いった



「アンタの全てが欲しいから。」


たったのそれだけ


それが私の求め続けた答えなのかどうかも

男がなんでそういったのかも。

あたしには、
全くわからない


そのまっすぐな目に
吸い込まれそうで

いつの間にか、指差していた手は裏返さえて手を差し伸べているようだった


その手に向かって、自分の腕が動いていくのは、無意識。


溢れそうになる涙だって
理由さえわからない無意識。


「助けてっ」


そういったのも、
たぶん。

無意識。


「俺が、全部から助け出してやる」

そういって
優しくあたしを抱きしめた



今までに感じたことのない、
気持ち悪くなくて心地の良い
このぬくもりは、

ホンモノのぬくもりと呼べるのだろうか

誰もがそうよばなくとも
私はそうよびたい


たとえ
それが嘘でも。

私はホンモノのぬくもりだと、
自惚れたい。

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