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人型ナビ

第3章 ドライブ①

そうそう、変わったのは人生と休日の過ごし方だけじゃない。

平日の過ごし方までガラリと変わった。
家に帰ってくると、次はどこにいこうか、とパソコンを開き、美味しいものはないかとグルメマップを本棚から引っ張り出し、観光スポットを検索し・・。

秋になってからは紅葉が綺麗だろうと、栃木県までドライブに行こうかと考えたり。

「ただいまー。」
「おかえり、なさい、ご飯、にしますか、お風呂、にしますか、それと、も、わたし、にしますか。」
「ぷっ・・あはははは!なんだよそれー!どこで覚えたんだよっ!ww」
「今日の、お昼、に、やっていた、昼のドラマ、で、学習、しまし、た。なにか、おかしかった、ですか?」
「ああ、そうか。昼ドラで覚えたのか。でもそれは覚えなくていいよ。笑ったのは不意をつかれたからというか・・」
「不意、とは、どういう、ものでしょうか?」
「うーん、不意っていうのは、突然何かをされた、とか急に言われたこととか・・」
「なるほど、学習、しました」

香枝は覚えていないことを覚えていこうとする。
学習機能が優れているのだ。
わからないことは聞くし、聞く人がいなければ探ろうとする。
よく意味を間違えているけど。
そのたびにそれを訂正して正しい意味で覚えてもらう。

しかし、これを一般にはめんどくさいと思うのかもしれないのだが・・今の俺には楽しくて仕方ない。

「本当、香枝を買って正解だったよ。」

俺はよくそう香枝に向かってではなく、独り言を言う。
香枝はそれに対してもニッコリ笑って小首をかしげる。
この意味は教えていないのだ。
教えるつもりもない。
香枝は香枝であって、ロボットなんかじゃないと思いたいからだ。

でもまぁ、香枝が届くまでの間、香枝が本当に届くか不安で仕方なかった。
営業マンの口車に乗せられたのでは、とか詐欺だったのではないか、とか。
万が一届いてみて思ってたものと違っているようなら返品しようと思っていたのだが・・。

「香枝がいない生活なんか、もう考えられないよ」

「香枝がいない、と、考えられ、ないの、ですか?」

「あはは!違うよ!あー、でもそうかも?」

「あ、は、は、は、は。」

「どうしたの?」

「楽しいとき、は、笑う、といつき、が、いったので。」

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