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人型ナビ

第3章 ドライブ①

ただ、欲を言えばもっと人間と同じような滑らかなしゃべり方をしてほしいものだ。
とはいえ、いくらか流暢になったのだが・・。

「当たり前か。」

俺は、香枝を拭き終えて、パジャマを着せてあげてから香枝の頭をよしよしと、愛情を込めつつ撫でた。

パジャマや下着、洋服などは全て密林.comか、ヤホーショッピングで購入している。
受け取りはやり方を香枝に教えたので香枝がこなす。
支払いはコンビニで俺が払うので問題ない。

「なにが、ですか?」

言葉に出したもの全てに答えてくれる。
だから、独り言なんて有り得ない。

「なんにでも返事をされると困ることもあるもんだ。」

そういって笑うと、香枝はやっぱり、「どうしてですか?」と聞いてくる。

しかしこれが楽しいのだ。
この掛け合い一つ一つが何よりの癒しなのだから。

「さて、明日行く場所を探そうか。」
「はい、香枝も、探し、ます」
「うん、手伝ってくれると嬉しいな」

手伝う、と言っても記憶してもらうだけ。
明日の目的地を記憶、そこまでの所要時間、ルートはいくつ存在しているのか、など。
そういったことを全て割り出してもらったりするだけ。
でも、これは香枝にしかできないことだから香枝に手伝ってもらわなきゃできない。

「それじゃあ・・。この間は紅葉シャワーの綺麗な滝を見に行ったしなぁ・・。あ、そうだ。今度は常陸太田にある竜神大吊橋にいこう。お昼はその近くの蕎麦屋で蕎麦を食べよう。登録先:竜神大吊橋」
「竜神大吊橋で検索をしています。検索できました、該当件数、1件。茨城県、常陸太田市、竜神峡大吊橋、で間違いはない、でしょうか?」
「うん、それで大丈夫だよ。今の季節だと、紅葉もきっと綺麗だよ。」

なんとも明日が楽しみだ。

「大体の、所要時間が、でました。」
「下道の時間だけ教えて。」
「約、2時間10分、です」
「そっかそっか、わかったよ。」

まぁ、うちからならそんなもんか。
下を走っても大丈夫そうだ。

「明日は下を走っていくよ。」
「はい、記憶して、おきます」
「うん、それじゃあ、ご飯食べようかな。」

俺は笑って台所に立って、お湯を沸かしてカップ麺をすする準備をした。

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