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ただいま。

第1章 余命宣告

「藤咲さん、お話があります。」
「はい。」

ここ最近、私は自分の体調に疑問を持っていた。
なんだかとてもだるかったし、すぐに息が切れてしまったり、さらには胸まで痛かったりすることもあった。

最初、私が呼ばれる前に看護士さんに「お母さんかお父さんは来てらっしゃいますか?」なんて聞かれたけれど、生憎私には両親がいない。
どちらも死んだわけではないけど、母親は自殺。
父親は母親が死ぬ前に女を作って出て行ったのだ。

なので、私には親と呼べる存在がもういないのだ。

結局、私が呼ばれることになったわけだ。

きっと、何かの病気に違いないと思って病院にきたのだけど。
それはやはり、いやな方向で「当たり」だったようだ。

「単刀直入に言わせてもらいます。藤咲さんの命はあと1ヶ月持ちません」
「・・え?」

どういうこと?
なんで?だってまだ21歳だよ?
おかしくない?そんな、ちょっと体調が悪かっただけでこんな宣告されなきゃいけない筋合い、ないじゃない・・。

「どういうことですか・・?」

聞くのが怖い。
だけど、聞かなくちゃダメな気がする。

「あなたの体は、残念ですが治すことができません。」

「どう・・して・・?」


搾り出せたのはこの言葉だけ。
敬語なんて使える余裕がなくなる。
急に押し寄せてくる、自分とはまだ遠い存在だろうと思っていた「死」。
それが確実に私を捉えるために足音を立ててにじり寄ってくる感じ。

「あなたの体調不良は・・普通の大したことのないものではなかった、ということです。」

「つまり・・?」

「何度も検査をしましたが、この病気はまだ解明されていない病気だということはわかりました。」

「そんな・・!」

そんな無責任な話がある!?
まぁ、わかってない病気ならしょうがないんだろうけど・・
でも、もっと言い方ってものが・・。

「しかし、今までに症例はあります。今までの症例とあわせてみると、もってあと20日といったところですか・・」

「うそだ・・。」

乾いた言葉。
嘘であってくれとどこかで思い、言葉として口から出てきたそれは、虚しくも空気に溶かされてしまった。

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