檻の中の女
第6章 信頼
「素敵な…本当に素敵なお父さんだね。」
「うん…。世界で1番、
素晴らしいお父さんだったよ…。
お父さんが仕事の間は、
私は家でおばあちゃんと二人きりで、
いつもうっとうしそうに扱われていたけど、
それでも平気だった…。
夜になったら、お父さんが帰ってきてくれて…
私を抱き上げて言ってくれるの。
『ただいまおちびちゃん。』
って。
眠りにつくときもずっとそばにいてくれて、
『おやすみ、愛してるよ。』
って。
だから私は平気だった。
お父さんがいたから……。
でも……でもね………
お父さんは平気じゃなかったみたい……。
お母さんが死んで…
お父さんは本当は限界だったみたい…。
私が中学に上がるころには……
重い病気にかかっていて、
死んでしまったの…………。」