ワールドアパート
第1章 プロローグ
コン コン コン
ドアを3回ノックする
これは正しいマナーらしく
初めて先生の私室に来た時に教えて頂いた
「…はーい」
中から聞き慣れたゆるい返事が返って来た
僕はドアを開けた
ドアノブは手が凍りつく程冷たかった
「失礼します。渋沢です」
本だらけのしかし整った部屋に
見ただけで優しいと分かる様な50代の男性
「いやわざわざすまないね。寒いから来るのは億劫だったろうに」
にっこりにっこり微笑んでイスから立ち上がると
ソファーに座り直し
向かい合ったソファーを指差す
「ほら渋沢くんソファーに座りなさい
君はコーヒーと紅茶はどちらが好きかね?」
僕は、考えた
先生は長話をするとコーヒーか紅茶を出して来る。
でも論文や授業の話をする時は飲み物は出してこない。理由は自分が主体か、相手が主体か。
論文を提出するのは学生
授業の質問をするのも学生
先生は答える、教える立場
その場合、先生は飲み物は出してこない。
コーヒー、紅茶を出して来るのは
先生が僕に頼みごとがある時だけだ
恐る恐る聞いてみた
「僕に頼みたいことでもありますか?」
先生は僕の目をチラリと見て、ふっと笑い
「まぁとりあえず座りなさい。紅茶を出そうね。私は紅茶の気分なんだ」
先生は紅茶の知識なんかない。
無論出て来たのは、ティーパックの紅茶だった。
ドアを3回ノックする
これは正しいマナーらしく
初めて先生の私室に来た時に教えて頂いた
「…はーい」
中から聞き慣れたゆるい返事が返って来た
僕はドアを開けた
ドアノブは手が凍りつく程冷たかった
「失礼します。渋沢です」
本だらけのしかし整った部屋に
見ただけで優しいと分かる様な50代の男性
「いやわざわざすまないね。寒いから来るのは億劫だったろうに」
にっこりにっこり微笑んでイスから立ち上がると
ソファーに座り直し
向かい合ったソファーを指差す
「ほら渋沢くんソファーに座りなさい
君はコーヒーと紅茶はどちらが好きかね?」
僕は、考えた
先生は長話をするとコーヒーか紅茶を出して来る。
でも論文や授業の話をする時は飲み物は出してこない。理由は自分が主体か、相手が主体か。
論文を提出するのは学生
授業の質問をするのも学生
先生は答える、教える立場
その場合、先生は飲み物は出してこない。
コーヒー、紅茶を出して来るのは
先生が僕に頼みごとがある時だけだ
恐る恐る聞いてみた
「僕に頼みたいことでもありますか?」
先生は僕の目をチラリと見て、ふっと笑い
「まぁとりあえず座りなさい。紅茶を出そうね。私は紅茶の気分なんだ」
先生は紅茶の知識なんかない。
無論出て来たのは、ティーパックの紅茶だった。