ワールドアパート
第5章 天才と会話
僕はあることに気がついた
なぜこの少女は
僕に敬語で話しているんだ
敬語なんて特別教えられることではないけれど
僕は社会性の一部だと思っている
人と接して初めて身につくスキルだと
この少女は僕を年上だと認識して
敬語を遣っている
そんなこと普通のことだと思うかもしれない
でも彼女は外の世界に出たことがない筈
社会性などまるでない筈
ましてや
初対面の僕とこんなに会話ができていること
自体おかしい
考えている僕の顔は歪んでいたのかもしれない
少女はそれに気づいた
「私の話をしましょうか?」
自分からそう言った
「え!?いや済まない。
…正直、生見さんの境遇について
興味がないのかと言われると嘘になる
話してくれるなら
ぜひ聞きたい」
少女は自分が
“監禁されていて普通ではない"
ということを理解している発言だった