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フーセンガム

第35章 輝き

(櫻井side)

父さんの部屋に着いた。

どうしても、入る気になれなかった。

ニ「翔…大丈夫だよ」

手をきゅっと力強く握ってくれた。

「和也…怖いよ。会うのが…怖いよ」
ニ「大丈夫だよ。俺がいる。二人なら…怖くない…」

和也は、使用人に開けるように頼んだ。

ドアが、ギーって音をたてて開く。

勤「翔じゃないか。久々だな」
「父さん…」

余命1ヶ月なんて微塵も感じさせない笑顔で迎えてくれた。

勤「ん?そちらは?」
ニ「二宮和也といいます。」
「俺の…恋人」
勤「…そうか。」

元気な姿をみれるのは、最後と思うと涙が出てきた。

勤「二宮くんと…いったかな?」
ニ「はい。」
勤「翔は、よく泣くだろ。」
「は?」
ニ「はい。『幸せ』って言いながらよく泣きます。」
勤「ははっ、そうか。」
「ちょ、和也…」
ニ「でも…悲しくても泣きます。」

父さんの笑い声がとまり、真剣な表情に変わる。

ニ「今だって、お父さんの病気を知って悲しんでます。本当は、声をあげて泣きたい。そう、翔は思ってます。」

……なんでわかるんだよ。

勤「…翔は、まだそんなに子供か」
ニ「はい。まだまだ、赤ちゃんですよ」

父さんと和也は、笑いあっていた。

勤「そうだな。翔には、まだ会社は継げないか。もう少し…生きないとな」
ニ「はい。生きてください。翔のタキシード姿、見れませんよ?」
勤「二宮くんのドレス姿もな?」
ニ「ふははっ」
勤「ははっ」

楽しそうに笑う二人。

「う…う~」
ニ「翔?」
「幸せだ…うっ、う~」
ニ「ね?」
勤「本当だな」

また、二人は笑った。

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