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フーセンガム

第56章 illumination

(哀川side)

一際、輝いて見えた。

シャーペンを拾って渡したときの
「ありがとう…」
が、忘れられなかった。

恥ずかしがっているのか、照れているのかわからない表情で言った。

なんか、胸がキュンってなった。

だから
「手袋を貸してあげる」
って言われたときは、キュンってまた胸が跳ねた。

大「哀川くん?」
「えっ、なに?」
大「大丈夫?ボーッとしてたよ」

フニャって笑う大野が可愛かった。

「ほ、ほんと?なんかごめん」
大「なんで謝るの?哀川くん面白いね」

また、笑う大野。

「なぁ、名前教えてよ」
大「名前?大野智。よろしくね」

なんて呼ぼうか……。

大野?智?
あ、智はさすがに早いか…。

大「智でいいからね」
「え!」
大「え?やだ?」
「ううん、大丈夫」

なんか俺、おかしい。
いつももっと落ち着いてる。

なんで、智の前だと俺が俺じゃなくなるんだ?

大「んふふ」


あ、そっか。

この笑顔に……
智に……
一目惚れしたんだ。

これが、今の俺の精一杯の答えだった。

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