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フーセンガム

第59章 時の画鋲

(大野side)

「まーくん…」

泣いてた。
まーくんが泣いてたんだ。

相「大好きだよ…」
「ん~、まーくん…」
相「智…海、行くのやめよ」

俺を抱き締めるまーくんの手が、声が、体が震えていた。

「…僕は、大丈夫だよ…」
相「俺が大丈夫じゃない…」
「え?」
相「怖いんだよ……智を失うのが」

僕を失う?

相「智が、苦しんでたのはわかるよ。でも、俺も苦しい。海にいったらまた智に怖い思いをさせてしまいそうで…」

まーくんが嗚咽交じりの声で言う。

「うん……僕も本当は怖いよ」

冬斗のことを思い出してしまう。
また、死にたくなったらどうしよう。

とか、いろいろ考えた。

「けどね…まーくんとなら大丈夫な気がするんだ」

まーくんの涙が、首筋に落ちる。

「愛してるからっ」

まーくんに強くしがみつく。

相「智…」
「まーくんのために、今日は海に行かないよ」
相「ありがとう…そして、ごめん…」

震えるまーくんの背中を撫でる。

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