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フーセンガム

第10章 フーセンガム

(二宮side)

今日まで、たくさんのケンカをしてその倍の愛情をもらった。

櫻「ガムってまだある?」
「あるよ」
櫻「もらっていい?」
「うん。」

かばんから、ガムの小さな箱を取り出す。

「はい、どうぞ」
櫻「ありがと」

翔さんが、ガムを食べ始める。

「翔さんもガム好きなの?」
櫻「うん」

かっこいい顔で、そんなにかわいい顔で笑って…。

「そっか」

もっと買っとけば良かったな。

櫻「あのさ」
「何?」
櫻「フーセンガムって俺たちに似てない?」
「フーセンガムが?」
櫻「うん」

どういうことだろう。

櫻「だってさ、ガムって膨らましすぎちゃうと破裂しちゃうでしょ?」

相槌を打ちながら、話を聞く。

櫻「俺たちだってさ、たまに破裂しちゃうでしょ?」
「…ケンカのこと?」
櫻「そうそう」
「まぁ、そうだね」
櫻「でも、何回破裂したって絶対に元に戻るでしょ?」

翔さんの言葉の使いまわしがうまくて、感動してきた。

櫻「だから、こうやって…」

手を握られる。

櫻「触れられる」

優しい笑みを浮かべる翔さん。

「……泣くよ?」
櫻「いいよ、おいで」

翔さんの胸に飛び込んで、涙を流した。

「好きだよ、誰よりも」
櫻「俺は、大好きだよ?」

だったら…。

「愛してる」
櫻「愛してる」

二人の声が重なる。
そのまま、唇を重ね笑い合う。

夕焼けが、二人の影を余計に大きく見せたのだった。

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