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秘密の時間は私のもの

第24章 2人の帰り道 1人の決意

柔らかくて優しい文章を颯太に。


これでダメなら、どうしようか。


返信の無い画面を見詰め、次の文章を考える。



........



送れはしないけれど、と動く指。



“俺は笑ってる颯太が好きだよ”



あぁ。こんな文章。


送れたらどれだけ良いだろう。


もういっそ、送ってしまおうか。


それで、気持が伝わり、関わりがなくなっても


伝わっただけいいんじゃないのか?


なんて、割り切れないから傍に居たいから


俺は文章を消す......手前。


俺のその手を止めるように、颯太の手が俺の袖を掴んだ。


その手を辿る様に颯太を見れば


俯いて、されど耳は真っ赤な颯太を捉える。



「ずっ......亞.....ありが、と....ずっ...」



鼻をすする音と、時折落ちる光るもので


颯太は泣いているのだと俺は察した。



「.....そ....」

「無理に、ずずっ....喋らないで.....あぁ、なんだか今日の亞は特別優しくて、こそばいなぁ」



言って、上げた顔は涙にまみれていたが、しっかり笑っていて。


ちょうど、颯太の後ろ。


夕焼けが差し込んで、それはそれは綺麗で。


出ようとする手を、抱き締めようとする手を俺は必死に押さえ込んだ。

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