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秘密の時間は私のもの

第29章 相談

それは、颯太から俺の頬へ伸びた手で。


その瞳は切なく、でもどこか優しく俺を見詰めていた。


それが一体、何を意味しているのか俺には分からず


俺は動きも、口も閉ざしてしまい


その隙を狙うかのように、颯太が口を開く。。



「..........亞....」





「泣かないで.....」





......え?なに?なんだって?


今、颯太はなんて.....


“泣かないで”って....


俺に.....俺、に?


.......俺が、いつ、泣いた?


何故、颯太はこの状況でそれを口にしたんだ。


分からない。


分からない、けど....


俺の目頭は嫌になる程、熱くなり始めて。



「亞.....」



颯太が体を捻り、もう片方の手を俺に伸ばす。


優しい表情、優しい温もり。


全てを受け入れた時、俺はきっと泣いてしまう。


泣いてしまえば、溢れてしまう。


俺だけが幸せな終わりを迎えてしまう。


それだけは......避けなくては、いけない。



ぐちゅん!



「んぐぅ?!」



俺へ向けられる颯太からの感情全てを遮断するように


俺は自らを颯太に打ち付けた。

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