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秘密の時間は私のもの

第30章 借し

だが、よく考えてみれば今は上野がいる。


颯太が自らの意思で俺から離れたと、滝波は恐らく秒殺で察知。


妙に颯太の肩を持つ滝波にしちゃあ、理由は分からずとも颯太の意思は尊重したい。


でも、男同士の行為は見たい。


俺に頼めないなら、颯太がホの字である上野に.....


......これだ。確実にこれだ。


上野があんなところでスるとは考えにくいが


上野は頼まれたら断れない質と見た。


......質と見た、が...


あの上野だぞ。


ヒーロー精神有り余る


いかにも好きな人は大事にしたくて仕方ない男だぞ?


好きな奴とセックスしろなんていう天使の囁きの他、何でもないそれを


掃いて捨てることだってあるのでは?



でも、そうなると滝波がおとなしい理由がなくなるし....



まさか、颯太の予想外の行動に滝波も混乱して


身動きが取れないとかあったり?


あの滝波が....?



「まっさか~」



思わず声に出してしまったそれに


いつの間にか俺に落とされていた影が、びくりと動いた。


見上げれば、女生徒1人。



「あ.....藤塚くん。えと、あの、呼んでるよ?」



示された先を見れば、そこには


腕を組み、俺を真っ直ぐ見据える上野がいた。

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