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秘密の時間は私のもの

第30章 借し

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まあ、なんと律儀に覚えていることでしょう。



俺なんてすっかり忘れてたわ



自販機の前で何を買おうか悩んでいる上野を見て思う。


普通科の俺がいるクラスまで来て何かと思えば、1言。



『借り、返してもらいに来た』



一瞬何のことか悩んだわ



そういえば、あの時、買ってなかったような気もする。


しかし、何故、今、このタイミングで....?


いや、違う。逆だ。


このタイミングだからこそ、こいつはこれを使ってきやがったんだろう。


“俺と話す口実”として。



「決めた。110円」



俺の目を見ずに、手を差し出す上野。


視線の先は缶コーヒー。


しかも、ブラックを見てやがる。



飲み物さえかっこいいってか?

ケッ



俺は、乱暴に後ろポッケから財布を取り出し、小銭を見やる。


そこにはきっかり110円が存在していたが


変なプライドが500円玉を手にする。


差し出されている手とは


ちょっとズレたところにポイッと投げる俺の意地の悪さ。


しかし、上野にとってそんなことは造作も無いことらしい。


目を向けることなどせず、しっかりとそれをキャッチしやがった。



「金、投げるなよ...」



呆れたように溜息を吐く上野に向かって


べーっと舌を出す俺。

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