秘密の時間は私のもの
第30章 借し
あぁ、分かってたさ。
あれはちょっとした遊びであって
今が放課後だって知らなかった訳では断じてない。
だって、よく見ろよ。
周りの明るさが、若干暗いだろ?
夕焼け小焼けで烏も山に帰ろうとしている。
この状況下で俺が気付いてないなんて、そんなこと
「......いつまで落ち込んでんだよ。藤塚」
.....あったんだよ。くそが....
情けないやら恥ずかしいやら
様々な感情が俺の中に巡り、現在、項垂れ中。
今思えば、知らばっくれてそのまま帰る、という手もあったように思う。
そんなことをしたら、最後。
上野からは変な人レッテルが貼られ
多分、もう一生、上野とは顔を合わせられなくなるだろう。
でも、別に構わないっちゃ、構わない。
俺個人が上野に用があることは
颯太のあの一件が終わったと思われる今。
まずないと言ってもおかしくないからだ。
それに、何かと勘のいいこいつと会えば
事ある事に話は颯太関連になるのが目に見えてて。
俺はそれを聞きたくない、と来れば、別に会いにくくなろうが
むしろ、会えない理由があった方がいい。
なのに、記憶消そうとするってなんだよ....
お陰で、腕掴まれて逃げようにも逃げられなくなってしまった。