秘密の時間は私のもの
第32章 1ヶ月の出来事①
逃げるなよ
逃げる必要なんてないんだから
だって亞は、僕のことーーーー
「止めてよ!!!」
声を出せば、止む、もう1人の僕の声。
体が震え、息もし辛い。
立っていられなくて、その場にしゃがむ。
ぎゅっと自分の体を抱き締め、落ち着きを取り戻そうと深く深呼吸を繰り返す。
なのに、取り戻そうとすればする程浮かぶ、亞の顔。
あんな切なそうなのに、熱を持った瞳で見詰められて気付かない方がおかしい。
だけど、ダメなんだよ。亞
お願い
お願いだから
僕にそんな顔を、見せないで
僕に、亞の気持ちを気付かせないで
気付いたら、僕は欲張ってしまう。
亞も上野も、って。
簡単に、手に入るからって。
だけど、ダメなんだよ。
僕は“綺麗”なままでいたい。
一途な自分でいたいんだ。
2人とも、なんて意地汚くてみっともない。
そんな僕に、僕はなりたくない。
ただでさえ、汚い身体。
心までそんな欲張りで汚い奴に、僕はなりたくないんだ。
そう、だから、亞から逃げた。
逃げたのに....
こんなに脳裏に焼き付いていたら、意味が無い。