秘密の時間は私のもの
第33章 デート②
ぱたん、と音がし、観覧車の扉が閉じられた。
景色を見れば、当たり前だが上昇しているようで。
今まで乗った乗り物とは雲泥の差。
ゆっくりのんびり、乗り物は上昇していく。
ちらりと視線を景色から外し、颯太を見る。
その顔は、暗いままで。
さっきまでの明るさが嘘のよう。
「あー、やっぱ、颯太にはぬる過ぎた?」
違うと分かっていても、2人きりの空間。
喋らなければ音が無い空間で、無言はきつい。
だけど、応答はない。
めげず、喋り続ける。
「あ。あれ、1番最初に乗った奴だな
こうみると、マジでたけぇとこからおってんだなぁ
あ、あれフリーフォール
人間ってあの高さからおっても死なないんだな....驚いた
お、あれは」
「僕、嘘吐いたんだ」
ポツリと呟かれた細い声。
だけど、それが今日初めての“颯太の言葉”な気がして。
俺は口を閉じ、颯太の言葉の続きを待った。
「......楽しかったのは、嘘じゃない
でも、本当は.....こうやって2人で話せる状態になりたくなかっただけなんだ」
「だって、1ヶ月.........1ヶ月だよ?!
僕の個人的な葛藤が故の1ヶ月!」
いきなりの大きな声にびくりと体が揺れる。