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秘密の時間は私のもの

第34章 1ヶ月の出来事②

俺は、小さな震えるその手を、両手で優しく包み


安心させるよう、ゆっくり返事を返した。



「.......はい。こちらこそ。宜しくお願いします」



立川の俺が映る瞳に、涙が溜まる。


零れぬように俺は、自分という器に立川を沈めた。


ぎゅっと優しく抱き締め、胸に冷たい感触を感じながらも


視線は滝波を真っ直ぐ捉える。



「......滝波、立川のもう1つの好き
立川が傷付かない様に、どうか....どうか...」

「.....なんて顔するんですか。本当に、全員不器用すぎますよ
なんで、自分を犠牲にするのか
分かった気持ち、知った想い、自分に良いよう動かせばいいのに」



滝波の言葉はごもっとも。


藤塚が、俺を蹴落そうとするような奴だったら


俺だって、それ相応のことをしただろう。


だけど、藤塚って奴は俺が思っている以上にいい奴すぎて。


それは、うっかり幸せを願ってしまう程で。



「まあ、いいでしょう。貴方方が望んだこと
私は、文書などで学んだ知恵を授けるだけです」

「あぁ、助かる」

「あ、あと、1つ言っときますが」





「私、ハピエン厨なので、そこはご了承下さいね」





その言葉を俺が理解するよりも早く


滝波は準備することがある等の理由で


その場から消えていったのだった。

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