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秘密の時間は私のもの

第35章 デート③

そして、こういう時って言うのは必ずと言っていい程。



「ど、どうしよう。亞。へ、返事がな」



俺に、飛び火が来る。


さっきまで、怒鳴り散らしていた奴に


そんな泣きそうな声で、よく助けを求められるな、と思う。


颯太にしちゃあ、目の前の現状が第一で


さっきまでの出来事は、遥か彼方。


もはや頭にないのだろう。


でも、残念ながら、俺はあるから。


さっき、流されないって決めたから。


悪いけど、無視を決め込....



ギュゥ......



「亞......」



.......っ.....ッ...!



どこかでも思った気がするが、颯太の、この


ドピンポイントに男心をくすぐる行動は、どこで覚えてくるのだろう。


上着を、後ろから両手で止めるように握り締め


そんな涙声で名前なんて呼ばれたら、どんな男だって揺らぐ。



ダメだダメだ!揺らぐな!

しっかり自分持てっつーの!



微量の理性でなんとか食いしばり、颯太の手を払おうとしたのだが


聞こえてきた声によって、それは止められた。





「大丈夫だから。ちゃんと亞の言葉、届いたから。流そうなんて、思ってないから」




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