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秘密の時間は私のもの

第38章 秘密の時間は

もしや、なんとなくとか、そんな抽象的な理由じゃああるまいな。


それでは、私のもやもやが晴れないじゃないか。


自分本位の考えを突っ切っていると


ようやく、藤塚氏の言葉が続いた。



「俺の中の颯太を颯太のままで居させたかったから」

「.......」

「お前の受け売りであっても
俺も上野もなんて、そんな選択
颯太にして欲しくなかったんだよ
綺麗事だろうけどな」



はは、と自嘲気味に藤塚氏は笑うけど


私も酷く共感してしまったから、褒めてしんぜよう。



「そんなことないです
立派な理由だと思いますよ」

「.....それはどーも」



もっと驚くかと思ったが、割にシンプルに返された。


私の受け売り.....


やはり真実は知らない様子。


でも、まだ少しでも、綺麗な颯太くんが見えている様子の藤塚氏に


真実を教えるのは酷だろうから、黙っておくことにする。


その代わりと言ってはなんだけど


思った可能性を口にしてみる。



「上野くんも、そうやって思って身を引く
とかは考えなかったんですか?
もし貴方が言うのが、ほんのちょっと遅かったら
上野くんからのさよならが聞けたかもしれない
そうしたら、って」

「.....あー、今考えればその可能性もあったのかー」



惜しいことしたなー、と呟くけども


藤塚氏の雰囲気からはそれを感じられない。

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