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秘密の時間は私のもの

第38章 秘密の時間は

じと目で見詰めれば、藤塚氏、はぁと溜息一つ。



「ご察しの通り
その可能性を思い付いていたとしても
俺は蹴って、言う言葉も一緒だったろうよ」



もうここまで来ると


この男を優しいという言葉で表すのは、間違っている気がする。


1番しっくりくる言葉を私は既に頭に浮かんでいる。


とことん自分を自分の手で劣位に追いやって行くスタイル。


そう。この男はドがつくM以上にMなのだ。



「俺はMじゃねぇぞ」

「私、声に出してました?」

「顔に出てんだよ」



それは失態。


しかし、致し方ない。


近くにいる男がドよりも上を行くMだと分かれば


誰だって引いてしまう。



「だから、Mじゃねぇって」

「じゃあ何故、そんなにも自分に厳しいんですか」

「厳しい訳じゃねぇよ
けじめだよ。けじめ
約束、守らずして何が男だよ」



ことある事に約束を出す藤塚氏だが


その約束というのは、自分をそれ程までに殺す価値があるのだろうか。


私には到底見当もつかない。



「そもそも、あの2人の恋路だったところに
勝手に入ったの、俺だしな
そんな俺が、颯太に対するそういう理想抱いたなら
身を引くには持って来いじゃねぇか」

「ふーん?へーえ?ほーう?」

「別に理解しなくていい
自己満の世界だし」


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