テキストサイズ

特別刑務所(仮)

第18章 刑務。

「お祖父様!」
「おや、元か。どうしたんだい?」

耳の遠くなった祖父に父親の怒鳴り声は聞こえない。
そもそもいい息子、いい父を演じているあの人を祖父は自慢の息子と言っている。そのイメージを崩すつもりはない。だからいつだって俺は本当の事は言わない。

「お祖父様。今日はずっとここにいてもよろしいですか?」
「元はおじいちゃんが好きかい?」
「大好きです。お祖父様!」

そうかいと、しわしわの手で頭を撫でる。

「元!ここにいたのか。お祖父様は体が悪いのだから無理をさせてはいけないとあれ程言って聞かせているだろ?」
「・・・・・・すみませんでした。お父様。」
「元は頭のいい子だからお父さんの言うことがわかるんだね?さ、おいで。お父さんすみませんでした。ゆっくりお休みください。」
「元、これをあげようね。」

祖父からもらったのはペンダントだった。
それは俺の記憶にはない祖母が祖父に送ったもの。

「お祖父様、これは大切なものでは?」
「いいんだよ。元が持っていなさい。」
「さ、早く来なさい。元」

祖父からペンダントを受け取り父に手を引かれ部屋から出ていく。
部屋の扉がしまる。その瞬間から地獄に変わる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ