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メビウス~無限∞回路

第4章 囚われる闇

 目線を合わせて問いかける。

「どうしてココに堕ちてきたか分かる?」
「…ああ、分かるさ」
「本当に?」
「名前は吉沢幸一、小学校五年生クラスは三組。花壇係だね」

「…うん」

 少年、幸一はズバリと当てらたことにビックリし、まじまじとねんど人形を見る。
 怖さからの逃避か、それとも子供特有の興味の移り変わりか。
 幸一はねんど人形を逆さにしてみた。

「うわぁ!それは止めたって~っ!」

 足がもげるから。
 あいては、ねんど人形だ。
 興味はひとまず置いて、とりあえず深呼吸をひとつ。

「うん…おちついてきた」
「そうかい、そいつは良かったな」
「で、ねんどはなんのためにココにいるの?僕を食べるため?」

 小首を傾げて冷静に聞く幸一に、ねんど人形は口元を軽く緩めて笑う。

「それなら出会いがしらで食べている」
「じゃ、助けに来てくれたの?」
「微妙だな」

 微妙。その言葉に小首を傾げる幸一に、ねんど人形は首をくるくると回す。

「正確には、手助けに来た…ってとこかな?」
「そうなの?」
「そう言うことだ。戻ってきたいなら、お前が選べ」

 選ぶ。何を選ぶというのだろうか。
 幸一には分からない。
 気がついたらココに居ただけで、どうして堕ちたのかも分からないのに。
 どうやって戻るというのだろうか。

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