テキストサイズ

メビウス~無限∞回路

第4章 囚われる闇

 かと言って選べるかと言うと、―――迷う。
 母親の声がまるで耳元で囁かれているみたい。

『ホント…幸一は自分で選べないのね、そういうの優柔不断って言ってね。お友達が嫌がるのよ』

 本当に?友達『が』じゃなくてお母さん『が』…じゃないの?
 喉のすぐ側まで出たのに、口から出ず飲み込んだ問いかけ。
 左右に広がる闇が霧を深めるのを見て、ねんど人形は幸一の膝を蹴った。

「いたっ!なにするんだよ!」

 微妙にいい位置を蹴られ、幸一は膝を撫でながらねんど人形を見た。

「慎重なのは悪いことじゃない!…考えていいっ」

 まるで胸の内に響く声が、ねんど人形にはわかっているようで。幸一はその場に座ると、ねんど人形を見て笑った。

「僕ね、…優柔不断なんだって……イライラするってよく怒られてる」

 遠くを見る瞳は、淋しそうにくすんだ闇を見ている。ねんど人形は幸一の膝を器用に登り、寄せられた頬に冷たい身体をひっつけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ