メビウス~無限∞回路
第4章 囚われる闇
「それの何が悪いんだ…?」
きょとんとした声で聞いてくる。表情が動くはずはないのに、とても不思議そうに言った。
「…なんでだろうね」
明確な答えを持たない。それが、時々人間の世界では摩擦を持つ。それだけだと言えたら、こんなに寂しい気持ちにならずに済んだのかも知れない。
しかしそれらは推測の域を出ることもなかった。
「とりあえず思ったまま、進もう…戻れなくなる前に、さ」
頬に触れる小さな塊。この世界で冷たい肌と違う温かさが、宿っている不思議さ。
とりあえずせめて、どちらだと言えるように考えようと思って、不意に小さな明かりが向こうで揺れるのを見た。
「ね!今灯りが見えたよ!」
見たよね、と振り返るとねんど人形は左右に顔を振る。しかしその場に立っていた筈のねんど人形の姿はなく、光が差し込むと一気に洪水みたいに押し寄せてくる。驚いてわたわたと溺れるしかない―――と目を閉じた瞬間。
「幸一っ…」
目の前に誰かがいる。けれどまだぼんやりとした視界に映るしかない相手に、幸一は何かを言おうとして、声が喉を通らない事実にきょとんした。
「先生っ!幸一が目を覚ましました…」
嗚咽でつまりながら、それが母親というのを理解する。すぐに担当医が現れ、何かを言われたが把握はうまく出来ない。それよりもどうして自分が此処にいるのか分からない。たしか………記憶が一気に黒に飲み込まれる。誰かといたことも、話していたこともさっきのことなのに。
きょとんとした声で聞いてくる。表情が動くはずはないのに、とても不思議そうに言った。
「…なんでだろうね」
明確な答えを持たない。それが、時々人間の世界では摩擦を持つ。それだけだと言えたら、こんなに寂しい気持ちにならずに済んだのかも知れない。
しかしそれらは推測の域を出ることもなかった。
「とりあえず思ったまま、進もう…戻れなくなる前に、さ」
頬に触れる小さな塊。この世界で冷たい肌と違う温かさが、宿っている不思議さ。
とりあえずせめて、どちらだと言えるように考えようと思って、不意に小さな明かりが向こうで揺れるのを見た。
「ね!今灯りが見えたよ!」
見たよね、と振り返るとねんど人形は左右に顔を振る。しかしその場に立っていた筈のねんど人形の姿はなく、光が差し込むと一気に洪水みたいに押し寄せてくる。驚いてわたわたと溺れるしかない―――と目を閉じた瞬間。
「幸一っ…」
目の前に誰かがいる。けれどまだぼんやりとした視界に映るしかない相手に、幸一は何かを言おうとして、声が喉を通らない事実にきょとんした。
「先生っ!幸一が目を覚ましました…」
嗚咽でつまりながら、それが母親というのを理解する。すぐに担当医が現れ、何かを言われたが把握はうまく出来ない。それよりもどうして自分が此処にいるのか分からない。たしか………記憶が一気に黒に飲み込まれる。誰かといたことも、話していたこともさっきのことなのに。