メビウス~無限∞回路
第5章 闇に在る存在
「やだぁ!!」
潜在意識に残る闇への恐怖と、初めて見た無機質な瞳。そしてどれほど口が悪くとも暴力的な、強引さは見せなかった男の見せた強引さ。それら全てが女の本能に『危険』という二文字へ変える。
「離してっ!!!」
もがけばもがくほど男の両腕は強く、女の身体を羽交い絞めに抱きしめた。
せめて『こうして抱いてやってんじゃん』といういつもの軽口があれば、どれほど女が安らぐだろう。しかし男はそれらの一切を微塵にも出さないまま、女を連れて廊下へと辿りついた。
外よりも暗い屋敷の奥深くへ向けて土足で上がる。
怖い、なんてレベルの話ではなくなっていた。
部屋の入り口が大きな音を立てて開きだす。奥から感じる圧力が怖い。
女はこれだけ叫んでいたのに、誰も外の門からやってくる兆しがないことが怖かった。
犯罪に巻き込まれる被害者に自分がなろうとしている。どれだけ乱れた思考であっても、それは危険を察知する本能で訴えていた。
「誰かーっ!!」
声を更に上げても、恐ろしい静寂が辺りをシン…と鎮まらせていた。
此処は見物に来る人間が多く居て、さきほど二人で到着した時には人の動きがあった。
重なったことに面白みが下がると思った女だったが、今はこんなに切望している。
少し離れているが、大きな道路沿いがあって、コンビニエンスストアーがある筈だ。
夜中。これだけの静寂の中、響く女の悲鳴に、野次馬さえ現れない現状はどう考えてもおかしい。
全身で女は抗うのだが、拘束する男の手はますます力を持ち、掴まれた腕の痛みに涙が目尻を濡らした。
本当に誰も居ない。
潜在意識に残る闇への恐怖と、初めて見た無機質な瞳。そしてどれほど口が悪くとも暴力的な、強引さは見せなかった男の見せた強引さ。それら全てが女の本能に『危険』という二文字へ変える。
「離してっ!!!」
もがけばもがくほど男の両腕は強く、女の身体を羽交い絞めに抱きしめた。
せめて『こうして抱いてやってんじゃん』といういつもの軽口があれば、どれほど女が安らぐだろう。しかし男はそれらの一切を微塵にも出さないまま、女を連れて廊下へと辿りついた。
外よりも暗い屋敷の奥深くへ向けて土足で上がる。
怖い、なんてレベルの話ではなくなっていた。
部屋の入り口が大きな音を立てて開きだす。奥から感じる圧力が怖い。
女はこれだけ叫んでいたのに、誰も外の門からやってくる兆しがないことが怖かった。
犯罪に巻き込まれる被害者に自分がなろうとしている。どれだけ乱れた思考であっても、それは危険を察知する本能で訴えていた。
「誰かーっ!!」
声を更に上げても、恐ろしい静寂が辺りをシン…と鎮まらせていた。
此処は見物に来る人間が多く居て、さきほど二人で到着した時には人の動きがあった。
重なったことに面白みが下がると思った女だったが、今はこんなに切望している。
少し離れているが、大きな道路沿いがあって、コンビニエンスストアーがある筈だ。
夜中。これだけの静寂の中、響く女の悲鳴に、野次馬さえ現れない現状はどう考えてもおかしい。
全身で女は抗うのだが、拘束する男の手はますます力を持ち、掴まれた腕の痛みに涙が目尻を濡らした。
本当に誰も居ない。