メビウス~無限∞回路
第8章 鳴き声(中編)
尊は大人しくしているが、本来の気質的には黄泉比良坂に近い。だからこそ穢れが極力少ないこの場所へと無意識に降りたのだろう。神楽を宿した時に母親は、7日通して同じ夢を見たという。それは太陽が自分の胎内に小篭るというものであった。
「あーもう…身体が重いです…」
塩で身体を清め、シャワーで身体を流す。略式である上に適当だが、これが一番身体に馴染んだ方法である神楽は頭から被って大きく溜息を零した。
視界の隅のギリギリに見えるモノがある。これは予感とでもいうのかも知れない。見えそうで見えないからこそ、それに意識を集中しようとする。けれどそれは霞や靄に包まれてキチンとした形では見えないのだ。
「困ったなぁ…瘴気が強いのかな…」
だとしたら太陽の光が閉ざされている状態は好ましくない。魂布留(たまふり)の祝詞で身の奥に詰まる穢れを祓う。シャワーから出て身体を吹いて時計を見ると、そろそろ出ないと午後からの講義に間に合わない。予想外に重くのしかかる雨の気配にのろのろと着衣して、台所へ行くと神楽専用のお神酒をグイッと煽った。
「…こんなものかな…」
袖でグイッと拭うと、玄関に置いていた鞄を拾い外に出る。外では尊が唇を尖らせながら、ブツブツと何か言いながらそれでもせっせと掃き掃除している。一度しだすと性格なのか、細かいものも履き集めていた。
「尊、用意終わりましたよ」
「ん? やっとかよ!」
「ええ、やっとです。…何をつ呟いていたんですか?」
「この漆黒の疾風の前に愚民(ゴミや木の葉)よ、ひれ伏すがいいっ!」
「……………そうですか」
「カッコイイだろうーっ!」
厨二だ。どうしよう、神様なのに厨二だ。
しかもテレビやビデオを見るのも好きな尊は、どう見ても某ゲンド◯ポーズで決めている。どうしよう、どうしよう。…ま、私じゃないですからいいですか。と神楽は自己完結をすると、そのまま先へと歩き出した。
「後、一応姿は消しておいてくださいね」
「わーったよ」
家の裏で育ている榊を一振り額に押し当て、そのままズボンのポッケにしまっている鋏でそっと切る。それを鞄の中に入れて、後ろで待っている尊を見上げて呟いた。
「…夜、黒…」
「………………」
「あーもう…身体が重いです…」
塩で身体を清め、シャワーで身体を流す。略式である上に適当だが、これが一番身体に馴染んだ方法である神楽は頭から被って大きく溜息を零した。
視界の隅のギリギリに見えるモノがある。これは予感とでもいうのかも知れない。見えそうで見えないからこそ、それに意識を集中しようとする。けれどそれは霞や靄に包まれてキチンとした形では見えないのだ。
「困ったなぁ…瘴気が強いのかな…」
だとしたら太陽の光が閉ざされている状態は好ましくない。魂布留(たまふり)の祝詞で身の奥に詰まる穢れを祓う。シャワーから出て身体を吹いて時計を見ると、そろそろ出ないと午後からの講義に間に合わない。予想外に重くのしかかる雨の気配にのろのろと着衣して、台所へ行くと神楽専用のお神酒をグイッと煽った。
「…こんなものかな…」
袖でグイッと拭うと、玄関に置いていた鞄を拾い外に出る。外では尊が唇を尖らせながら、ブツブツと何か言いながらそれでもせっせと掃き掃除している。一度しだすと性格なのか、細かいものも履き集めていた。
「尊、用意終わりましたよ」
「ん? やっとかよ!」
「ええ、やっとです。…何をつ呟いていたんですか?」
「この漆黒の疾風の前に愚民(ゴミや木の葉)よ、ひれ伏すがいいっ!」
「……………そうですか」
「カッコイイだろうーっ!」
厨二だ。どうしよう、神様なのに厨二だ。
しかもテレビやビデオを見るのも好きな尊は、どう見ても某ゲンド◯ポーズで決めている。どうしよう、どうしよう。…ま、私じゃないですからいいですか。と神楽は自己完結をすると、そのまま先へと歩き出した。
「後、一応姿は消しておいてくださいね」
「わーったよ」
家の裏で育ている榊を一振り額に押し当て、そのままズボンのポッケにしまっている鋏でそっと切る。それを鞄の中に入れて、後ろで待っている尊を見上げて呟いた。
「…夜、黒…」
「………………」