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妄想はご自由に

第6章 実家はリア充

自分の部屋に戻ると
ひんやりとした気に包まれる

出ていったままの部屋
ここだけ時間が止まっている

ピアノ・・・。

小さい時、姉と一緒に通っていた
近所のピアノの教室

そっと椅子に座る
ピアノの蓋を開けると鍵盤を叩く

「久し振りに弾いてよ
展覧会の絵だっけ?好きなやつ」
姉が入ってきた

私は無言で鍵盤の上で手を動かした
唯一、今でも弾ける曲
展覧会の絵のプロムナード

所々つまずきながら何とか弾けた

「あー もう弾けないや
 弾けるのこれだけだったのにぃ」

「思い出すなぁ~ あんたのプロポーズ事件」

姉がゲラゲラ笑う

「もぉ~ 忘れなさい!」

私が小学校2年生の頃、
同じピアノ教室のお兄ちゃん
ピアノが上手くて、大きな手と長い指
あの指で責められたい

って、なんじゃそりゃ

「お別れ演奏会 思い出すなぁ」

そう、そのお兄ちゃんがクリスマスに引っ越すことになって、教室の先生が演奏会を開いた

私は、お兄ちゃんがよく弾いていたプロムナードに挑戦した。全然上手く弾けなくて、皆に辞めろって言われたけど、演奏会で弾いたんだよね。お兄ちゃんが頑張ったねって褒めてくれた。それが嬉しくて。
最後別れるときに、皆が居るのも忘れて大声で叫んでいた。

「私のお嫁さんになって」って
周りは大爆笑

お兄ちゃんはびっくりしてた

「話したことも無いのに
 お嫁さんにするってねぇ」

姉がケラケラ笑う

本当はお嫁さんにしてって言うつもりだったのに、言い間違えて
さらに、自分が身に付けていたオモチャの指輪を婚約指輪だとあげたのだ

名前も知らず、今まで話したこともないお兄ちゃんに、お別れの当日に婚約指輪をあげる小学校2年生って、どんだけバカなんだか

でも、受け取ってくれた
大事にするって言ってくれた

それからお兄ちゃんは、私の白馬の王子様になった

名前覚えてないや

そっと姉に名前を覚えていないか聞いた

「う~ん、私が小四で、確か中学生だったよね。北川だったか、木村だったか」

木村!? 私の心臓が跳ねる

「確か 先生が ゆうくん って呼んでたよ」

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