
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
人の放つ子種は、生命の源である。それは半分であるため魂より効果は薄いが、鬼の喉と舌を潤すには充分なのだ。殺さなければ、頻繁に人を拉致する必要もない。鬼にとって人の精を絞るのは、効率的な手段だった。
そして新鮮な子種を量産するに適しているのは、女より男である。嫡男の幼名に女の名を付けて鬼から目を逸らすのは、これもまた効率的な防衛策だった。しかしそれが通じるのも、はっきりと性が分かるようになる年頃まで。もう成人している嘉明に、今さら女の振りをする策は無意味である。
(武士ってのは、鬼に狙われやすい清廉な魂の持ち主が多いからな。衆道も知らないって事は、鬼にとっては垢一つ付いてない、最大級の馳走だろう)
鬼が狙うのは元服前の稚児である事が多いのだが、これは狙われても仕方のない上玉だ。見つけた時鬼がどれだけ嬉々としたか想像すると、団右衛門の口の端が苦々しく歪んだ。
「さしあたっての問題は、鬼の潜伏先だな。こればっかりは、土地勘がないからよく分からん。八千代、だったか? そいつなら、朧気でも嫌な気配の場所を知ってそうなんだが」
