テキストサイズ

妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
「そこまで分かってんなら、むしろ一回させてくれよ」

「これから出発なのに、そんな余裕はない。まったく、お前は相変わらずだな」

 嘉明は呆れて溜め息を吐くが、その声に棘はない。団右衛門は胸に溢れる熱を発散しきれず、嘉明の腕を掴むと口付けた。

「んっ……!」

 退こうとする嘉明の腰を抱き寄せ、団右衛門は舌をねじ込む。水音が激しくなると、抵抗はいつしか同調に変わった。

「は、ぁ……」

「――これくらいの褒美なら許してくれたっていいだろ? 絶対その先までしないから」

 絶対という言葉がまったく信用ならない色気にまみれた視線は、嘉明を貫く。普段は実直に人を見る嘉明も今はそれに耐えきれず、下を向いて目を逸らした。

「……約束は、守れよ」

 嘉明はそう呟くと、顔を上げ今度は自ら口付ける。無理矢理奪うよりも嬉しい褒美を与えられれば、団右衛門のなけなしの良心は絶対という言葉を守る気になった。

 互いの舌を絡ませ求め合えば、離れがたくそれは終わらない。息が止まるほど荒く貪ると、意識が飛ぶくらい心地良かった。

「ん……団……」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ