
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
(考えている事はよく分からねぇが、あれはそうとう大物の殿様だな。しかもこのオレの実力を一瞬で見極めた、見所のある男だ。各地を放浪してきたが……これは、今度こそ運命の出会いかもしれねぇ)
生まれたからには、名を挙げたいと思うのが男という生き物である。団右衛門もまたしかり、流しの退魔師で終わるつもりは毛頭ない。
(良い酒も仕事もくれたし、向こうもオレを買ってる事は間違いねぇ。ここは一つ気合い入れて鬼退治して、オレに惚れさせてやるか!)
一方、嘉明も部屋を出て、仕事のため家臣と共に廊下を進んでいた。
「殿、まことにあの男を迎えるおつもりですか? あの粗暴な物言い、品のない所作、殿に対し厚かましい態度、斬り殺したい程の無礼者です」
「……確かに、私もあの男は好かぬ」
あっさりと団右衛門を否定した嘉明に、家臣の男は目を丸くする。しかも嘉明の否定は、一言に留まらなかったのだ。
「己を支える下の者を見下し、驕り高ぶる高慢な態度。あの気性は、私が一番嫌いで遠ざけたいものだ」
「そんなに嫌なら、どうして客分として迎えるのです」
