
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
「まだ、あれは若い。今は己以外見えず高慢であっても、世を渡り見聞を広げれば変わるかもしれない。そういった無法者の性根を叩き直すのも、私に課せられた使命だろう。のさばらせ腐らせるには、惜しい力を持っている」
「殿……なんと深いお心をお持ちなのですか。そこまで深慮していたとは知らず、無礼を申し上げました」
「いや、構わない。ところで八千代は、本当に何も告げずに出掛けたのか?」
「え、えぇ……まったく、あの男といい八千代といい、今日は騒がしい日ですな」
すると嘉明は足を止め、踵を返す。
「殿?」
「仕事はやめだ、私は出掛ける。馬の用意を」
「は、はっ!」
戻ってきて間もない内にまた出掛けるなど、嘉明の行動も奇妙である。主君の命令である以上逆らいは出来ないが、家臣の男も戸惑いを隠せなかった。
嘉明は数名の供を連れ、再び馬を走らせる。向かう先は城下から少し先の廃寺――嘉明が、八千代を拾った場所だった。
いつ潰れてもおかしくない荒れた廃寺は、伸びきった草が無造作に生える境内の中にある。そこは山賊すら寄り付かない、荒んだ地であった。
