
妖魔滅伝・団右衛門!
第6章 妖魔滅伝・嘉明!
突かれた傷から紫の液体が溢れ、残った蜘蛛の足も垂れる。と、その時。部下の声が辺りに響いた。
「嘉明様っ!!」
嘉明の背後に迫る、巨大な体躯。部下の一人が刀を突き出し止めるが、片腕一本でそれは薙ぎ倒された。
金色の髪に、赤い肌。とり憑かれれば地獄に落ちる魔性――八代が、嘉明に手招きしていた。
「その大きさの蜘蛛を難なく倒すとは、さすが武士の子よ。弛んだ体は醜いからな、それぐらい暴れる方が飼うには適している」
「八代、やはりお前の差し金か」
「八代……? ああ、今は八代だったな、そうだ」
八代は一瞬眉間にしわを寄せるが、すぐに余裕の表情に戻る。そして盾となる部下達を全員蠅のように軽く叩き潰し、嘉明の前に立った。
前には鬼。後ろも、倒れたとはいえいつ復活し外に沸き出るか分からない大蜘蛛。槍をふるう嘉明の拳が、両方を危ぶみ固く握られた。
「さあ、儂の元へ来い。さすれば街は無傷で返そう」
「断る。全員倒した方が、京の住人にとっても幸福だ」
「冷たいな。退魔師の汚れた手に毒されても、心は変わらず美しい」
