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妖魔滅伝・団右衛門!

第6章 妖魔滅伝・嘉明!

 
 団右衛門は破邪のものではない通常の刀を投げて、悠久に顎で示す。

「介錯は……それはご勘弁ください。弟の首をこの手で斬るなど、わしには出来ません」

「しかし介錯しなきゃ、苦しみが長引くだけだ。介錯は罪人を浄土へ送り楽にしてやる行為。いたずらに命を奪うのとは違う。八千代が自らケリつけるなら、介錯は兄であるあんたがやるべき事だろう」

 すると悠久の汗が、途端に増え始めた。目玉もきょろきょろと動き挙動不審で、動揺しているのは明らかだった。

「……嘉明なら、どうせ腹を斬らずに許すと思ったか? 覚悟もなく、はったりで切腹すると言い出したのか」

 団右衛門は一段声を下げ、苛立ちを交えて溜め息を吐く。

「ち、違います! ぼくは本気です!!」

「なら、どうして悠久は刀を取らない。大事な弟の命を引き換えにするほど、我が身が可愛いんだろう? けどな、悠久も相応の罰は受けるべきだ。命が助かるなら、なおさらな」

 八千代は一度脇差しを置くと、団右衛門の刀を拾い悠久に突きつけた。言葉は発さなかったが、悠久はためらいの後、それを受け取る。
 

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