テキストサイズ

妖魔滅伝・団右衛門!

第6章 妖魔滅伝・嘉明!

 
「黒い壁が壊れた後、小さな蜘蛛がたくさんいるのを見て、加勢を頼まねばならないと思って町に戻ったんです。しかし、きっと嘉明様はこの一件を秀吉様の耳には入れたくないはず。ならば誰に助けを呼べばいいのか分からず、途方にくれていたんです」

 汗の滲む悠久も、八千代に続き口を開く。

「わしは団さんに言われて町に戻りましたが、加藤清正様の居場所が分からずさまよっていました。そこで八千代をたまたま見つけて合流し、聞き込みをしてようやく清正様の屋敷を見つけたのですが……」

「清正様は既に出られた後と、その時言われました。この失態、どうお詫びすべきか悩み、戻るのが遅れてしまいました」

 八千代は顔を上げると、着物の上をはだけさせ腹を晒すと、挿していた脇差しを抜く。

「かくなる上は、この命を持って償いたいと思います。しかし兄……悠久殿は、まだ仕えて日も短いです。ぼくの命をもって、今回ばかりはお収め出来ないでしょうか」

 団右衛門は八千代と悠久の顔を覗く。二人とも真剣な眼差しで団右衛門を見返し、本気を示した。

「分かった。悠久、せめてもの情けだ。介錯はあんたがやれ」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ