
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
「参ったな。体が八千代でなければ、もう少し乱暴に切り抜けるのだが」
『お優しい事だ。それが、自らの首を締めるというのに』
八千代の喉から発せられるのは、まだ稚児の余韻が残る高い声ではない。冷静沈着な青年――もとい、鬼の低い声だった。
「八千代の体に取り憑き、私を捕らえるつもりだったか。行き先も告げずにいなくなったのも、お前のせいだな」
『まさか、そちらから出向いてくるとは思わなんだ。この体はもう用済みだな』
「ならば八千代に返してやってくれないか。お前とて、意識を乗っ取るのは骨だろう。私も、出来るなら八千代は斬りたくない」
体を押さえつけられ、いつ命を落としてもおかしくないと言うのに、嘉明は淡々と鬼に要求する。鬼は八千代の姿で大笑いすると、嘉明の顎を取り味見するように頬を舐めた。
『儂が本体で現れれば、斬り殺すつもりか。それを知って、この体を返すと思うのか』
「八千代を寄代にしなければ負ける程、お前は弱い鬼なのか? 私を食おうと言うのなら、全力で食らいついてみろ」
すると八千代の体が黒く禍々しい煙に包まれ、それが人の形を成していく。
